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ベーシックインカム遂行の諸条件

 投稿者:小田  投稿日:2007年 9月 3日(月)14時06分32秒
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  >仮に、最低賃金レベルのベーシックインカムが実現したとしたら、恐らくは最低限の労働力の再生産費用(コスト)分は労働力市場そのものからは離れ、逆に企業にとっては最低賃金を上回る分の+α分のみを支給すれば良くなるとも思えるので、各企業の直接的負担は減るというか「積極的」な労務政策を取れる可能性も産まれる気もします。

>ただ、具体的な財源として消費税を当てる事で、企業の負担を全く求めなくて済むかといえば、それはそれで非現実的ですが・・・

>前回の私の記事でも述べた様に、私は消費税を一概に否定はしておりませんが、それの持つ逆進性に対しての対策として、最低賃金レベルのベーシックインカムでは、未だに生活必需品への非課税なり、民主党の言う様な「戻し税」といった補完的制度が必用となるとも思いますし、法人税に全く累進性が無いというのも問題だとは思いますから。
(それは同意頂けるとは思いますが)

まず第一に、ベーシック・インカム制度は、国家がよほどの経済的利益の高い天然資源を所有している状況――この場合は、天然資源の国有から得られるレントが、ベーシイクインカムの財源に為り得るでしょうが――でもない限り、日本のような場合は、租税制度とリンクした所得再分配制度にならざるを得ないと思います。その場合、個人の事前的所得水準が高くなるにつれ、ベーシックインカムの支給額以上を税として徴収されるようになるでしょう。ベーシックインカムが最低賃金レベルで支給される場合、それはおそらくパートタイム労働や非正規雇用労働の最低賃金水準に相当するでしょうから、そのような最低賃金率の職種に従事していた個人の中には、労働時間を減らす人(例:母子家庭の母親など)が出てくると思います。その結果、こうした最低賃金水準の職種の労働供給が減る事で、むしろ最低賃金水準が結果的にベーシックインカム水準よりは上がる事になると思います。(つまり企業にとって、最低賃金を超える+α分を支給すればよいということにはならないでしょう)

上記の考察は所得税を財源としたモデルです。個人の事前的所得水準が高くなるにつれ、ベーシックインカムの支給額以上を税として徴収されるようになるのは、累進課税制度であれば当然ですが、単なる比例税(全ての個人の事前的所得に同一の税率を賦課する税制)でもそうなります。私自身はベーシックインカムは累進的所得税と法人税から財源を徴収すべきだと思いますが、もし政治的力関係で、それらが難しい場合にはベーシックインカム用の財源を比例所得税的に徴収するのもありかと思います――その場合、「中間」所得水準の税負担を増やさないという前提に立てば、ベーシックインカムの支給水準は、ロールズ的社会厚生関数から導かれる最適水準よりもずっと低い水準への政治的妥協を強いられるでしょうが――。また、伊賀さんのご主張のように、生活必需品への非課税及び「戻し税」付の消費税から財源を徴収するのもありだと思います。肝心なのは、日本における所得再分配を、現状に比べて少しでも強化できるような制度にする事でしょう。

>「個」に対する保障というベーシックインカムが、逆にそれを導入する社会における社会的な紐帯や文化という側面を無視できないという等の一般的指摘にも、一理はある気もします。

これは重要な指摘だと思います。私自身も、社会的連帯の文化抜きに福祉国家制度の充足もベーシックインカムも困難だと思います。北欧諸国が所得分配の平等性と経済的効率性の双方を高い水準で維持しているのには、社会的連帯の文化が要因として指摘されています。福祉制度というのは本質的に互恵的な制度ですから、その制度自体が社会的連帯の制度でもあるといえます。したがって、互恵的な福祉制度が充実し格差の少ない社会を、個人的にも安心できる居心地の良い社会だと多くの人が思っていなければ、福祉国家もベーシックインカムも政治的支持を失う、というものです。他方、米国のように分断化されている社会では、社会的連帯の文化よりも経済的自由主義の文化が強いわけで、有利な立場にある個人たちは、社会連帯的な再分配制度によって自分たちのセーフティネットを互恵的に確保するよりも、私設警備員を雇ったり民間の保険会社に加入するなど、私的に対応するほうをより選好するでしょう。日本の場合、まだ社会的連帯の文化の長い歴史と伝統を持っているわけなので、米国や中国などと比べても、福祉国家的路線でやれる土壌はまだ残っていると思います。

熱帯気候的というか・・・最低賃金レベルさえ貰えればあとは働かないという価値観が支配的な文化となっている国もあるわけです。

そういう社会であれば、自ずから最低所得水準も低くなる、ということだと思います。私が先に展開した2人の経済社会モデルに戻って考えてみれば、最低所得を構成する個人2の所得水準は、個人1の所得稼得能力がどれだけ高いか(つまりsの大きさ)、そして個人1の働く意欲がどれだけあるか(つまり彼の効用関数の性質)によって、決まってきます。所得稼得能力sが高ければ高いほど、そして個人1の働く意欲(所得を稼ぐ意欲)が余暇への選好に比べて強ければ強いほど、同じロールズ的社会厚生関数を前提にしても、最適な最低所得水準はより高くなります。このような国民の勤勉度が所与の下で、その時々のベーシックインカムの支給水準は決まる、という構造にあります。したがって、ロールズ的社会厚生関数を前提にして、もし将来におけるベーシックインカム支給水準をより高めたいと政府が考えるのであれば、例えば、国民の所得稼得能力sを高める為の教育政策・制度を独自に構想しなければなりません。そしてそのような政策は、その国家の国際競争力の強化政策という意味合いも持つわけです。
 
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